景気見通し調査(令和6年6月期)の結果を公表しました

重要 情報掲載日:2024.06.27

 福井商工会議所では、四半期に一度、管内の小規模事業者を対象にした「景気見通し調査」を行っています。このたび、令和6年6月期調査の結果がまとまりましたのでご報告いたします。

調査結果(定期調査)

調査概要

調査時期:令和6年5月27日(月)~6月7日(金)

調査方法:FAXによる送付・回収およびGoogleフォームによる回答

調査対象:福井商工会議所の会員 小規模事業所を中心に2,000件を抽出
※製造業・建設業・その他・・・従業員20人以下の事業所
※卸売業・小売業・サービス業・・・従業員5人以下の事業所

回 答 数:403件(回答率20.2%)

DI値とは…ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略で、景気動向を示す指標。「良い」「上昇した」とする企業割合から、「悪い」「下落した」とする企業割合を差し引いた値。「現在」DI値は3ヵ月前を基準とした現在の状況、「先行」DI値は今後3ヵ月後の状況を予測したもの。

業界の景況感

2期連続で景況悪化も、先行きは改善の見通し

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 業界全体の現在DI値は、▲44.4(-2.2ポイント)と2期連続で前回値から下落する動きとなった。また、前々回調査(令和5年12月期)までコロナ前の水準を上回る状況が続いていたが2期連続で下回る結果となり、新型コロナウイルス5類移行後、最も悪い結果となった。一方で、先行DI値は▲41.4(+3.0ポイント)となり、若干ではあるが改善予想となっている。
 業種別にみると、現在DI値は卸売業で▲78.0(-18.0ポイント) 、製造業で▲52.4(-6.8ポイント)と大幅に悪化し、自動車機器販売の事業所からは「中古車を含めた車両の販売数は、少子高齢化により減少していくとみられる」といった声や、機械部品加工の事業所からは「先行きを不安視する企業が多く、設備投資の動きが鈍化している影響で業界全体の景気が低迷している」といった回答があった。

自社の景況感

全体として3期ぶりに改善するも、卸売業は大幅に悪化

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 自社の景況は、現在DI値が▲29.9(+0.9ポイント)と3期ぶりに改善した。一方、先行DI値は▲33.3(-3.4ポイント)と悪化の傾向が見られた。
 業種別にみると、サービス業は現在DI値が▲9.1(+14.2ポイント)と大幅に改善した。一方、卸売業は現在DI値が▲68.9(-15.6ポイント)と2期連続で大幅に悪化した。住宅資材を販売する事業所からは「資材高騰により住宅建設やリフォームを控える動きが出ているため、それに伴い受注量が減少している」という声もあり、消費低迷の影響が危惧される。

売上高(受注高)

全業種では3期ぶりの改善、サービス業では新幹線開業効果も表れる

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 売上高(受注高)の現在DI値は、▲27.3(+5.0ポイント)と3期ぶりに改善した。一方、先行DI値は▲32.7(-5.4ポイント)と小幅ながら悪化の見通しとなった。
 業種別にみると、現在DI値はサービス業で0.0(+31.1ポイント)、小売業で▲42.0(+8.6ポイント)と改善したが、製造・建設・卸売業で悪化した。宿泊業の事業所からは「新幹線開業を機に、関東からの宿泊客がこれまでの2~3倍にまで増加した」との声が挙がったほか、飲食業の事業所からは「これまでは中京・関西圏の観光客が自家用車で来店することが多かったが、福井駅からタクシーで来店する首都圏の顧客が増加した」と回答しており、改善した業種では北陸新幹線福井開業が売上増加の要因の一つになっていることがわかった。

販売価格

4期ぶりの上昇も建設業は下降で、前回調査と対照的に

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 販売価格の現在DI値は、23.9(+6.8ポイント)と過去最高となった令和5年6月期調査ぶりに上昇に転じた。また、先行DI値は25.3(+1.4ポイント)と、わずかながら上昇の見通しとなった。
 業種別にみると、卸売業は39.3(+21.0ポイント)、製造業は23.8(+14.1ポイント)と現在DI値が大幅に上昇した。プラスチック容器製造の事業所からは、「材料メーカー(仕入先)からは値上げの要請があるため、利益確保のために価格転嫁している」といった声が聞かれた。その一方で、建設業においては現在DI値が19.5(-5.3ポイント)と下降し、電気通信工事を手掛ける事業所からは「資材全体の価格が値上がりしているなかで、取引先(元請企業)も削減できる部分からコストを下げていく動きがあり、当社も協力しなければならないと考えている」との声も聞かれ、業種間で価格転嫁の進展に差が見られた。

仕入価格

原材料高騰などで5期ぶりの悪化、先行きも改善期待は薄い

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仕入価格の現在DI値は、▲68.5(-9.9ポイント)と5期ぶりに悪化(仕入価格が上昇)した。また、先行DI値も▲67.7(+0.8ポイント)と厳しい見通しとなり、今後も仕入価格の高止まりは続く予想となった。
業種別にみると、現在DI値は小売業で▲71.2(-19.3ポイント)、製造業で▲69.0(-17.5ポイント)、卸売業で▲77.0(-12.0ポイント)など、すべての業種で悪化(仕入価格が上昇)した。タイヤ販売を行う事業所からは「原油価格の高騰によりタイヤの価格も上昇しているほか、ホイールなどタイヤに付随している部品も併せて値上がりしており、年間5%程度の割合で仕入価格が上昇している」という声が挙がった。

採算(収支)

サービス業で改善するも、全体としては変化なし

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採算(収支)状況を表す現在DI値は、▲38.3(+0.6ポイント)と、ほぼ前回同様となった。一方で、先行DI値は▲41.4(-3.1ポイント)とわずかながら悪化が予想される。
業種別にみると、サービス業は現在DI値が▲26.9(+14.7ポイント)と改善したが、先行DI値は▲36.7(-9.8ポイント)と先行き悪化を見通している。運輸サービスを提供する事業所は「燃料・車両費ともに値上がりし、価格転嫁は進めているもののコストアップに追いつかない状況であり、見通しは大変厳しい」と回答し、先行きに不安を感じている様子が窺えた。また、卸売業は現在DI値が▲58.3(-13.3ポイント)で2期連続の大幅な悪化となり、ここでも前述した「業界の景況」および「自社の景況」と連動して大幅に悪化し、他業種と比べても変動幅が大きい結果となった。

労働力

建設業・サービス業のほか、小売業でも不足感が高まる

 労働力については、「過不足なし」が64.4%(+2.8ポイント)と増加し、「不足」は31.1%(-2.7ポイント)と2期連続で減少した。しかし、3か月後は34.8%(+3.7ポイント)と増加し、再び不足感が強まる見通しとなった。
 業種別にみると「不足」と回答した割合は、建設業が43.2%(-7.3ポイント)で最多だった。加えて、サービス業で37.3%(+2.0ポイント)、小売業で25.4%(+10.0ポイント)と2期連続で不足感が強まっている。自動車販売の事業所は「求人を出しているが、応募が無いという現状を他社からも聞く」と回答した。また、サービス業の中の飲食業は「不足」が44.4%(+4.4ポイント)で、他業種と比べて不足感が強い状況が続いている。

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労働力の推移.png

資金繰り

状況は前回とほぼ変わらずも、飲食業で改善傾向

 現在の資金繰りの状況は、「問題なし」が55.8%(-0.1ポイント)と前回との変化は見られなかった。一方で、3カ月後の見通しは「問題なし」が52.0%(-3.8ポイント)と減少し、「やや苦しい」が31.9%(-0.6ポイント)、「苦しい」が16.1%(+3.2ポイント)となった。
 業種別にみると、「苦しい」は小売業で22.0%(+4.7ポイント)と唯一増加した。その一方、サービス業のうち飲食業では「問題なし」が36.9%(+21.9ポイント)、「苦しい」が10.5%(-34.5ポイント)と改善傾向が見られた。

資金繰り現状.png

資金繰り推移.png

設備投資

設備投資の動きは弱く。投資内容は「生産力増強」が増加

 今後3か月以内の設備投資計画は、「投資計画あり」が11.8%(-2.1ポイント)、「投資計画なし」は88.2%(+2.1ポイント)となった。
 業種別にみると、「投資計画あり」は小売業で10.3%(+4.5ポイント)、製造業で19.0%(+0.6ポイント)と増加が見られたものの増加幅は小さく、全体として設備投資の動きは弱い。
なお、「投資計画あり」と回答した事業所の投資内容では、「設備更新」が52.0%(-6.2ポイント)と最も多く、次に「生産力増強」で34.0%(+14.0ポイント)と続いた。一方で、「合理化・省力化」は22.0%(+0.2ポイント)と前回調査から増加したものの「生産力増強」を下回る結果となった。

設備投資計画.png

設備投資の目的.png

経営課題(内的要因)

「受注・販売量不足」が前回最多の「人材確保・育成」を上回る

 内的要因における経営上の課題は、「受注・販売量不足」を挙げる回答が42.2%(-0.7ポイント)と7期ぶりに最多となった。次いで「人材確保・育成」が41.9%(-3.9ポイント)と続き、人手不足の現状を反映する結果となった。なお、昨年10月から開始されたインボイス制度による「事務負担増」は14.3%(-1.1ポイント)と2期連続で減少した。
 業種別にみると、「人材確保・育成」は建設業で53.0%(+18.3ポイント)、サービス業で49.5%(+24.2ポイント)と前述した⑦の「労働力」の不足と連動して課題に挙げる回答が多く、「非正規の雇用を増やすなど採算面とのバランスをとっているが、難しい状況にある」と、人材確保に苦慮する声も聞かれた。

経営上の課題(内的).png

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経営課題(外的要因)

「原材料・燃料価格高騰」が11期連続で最多

 外的要因における経営上の課題は、「原材料・燃料価格高騰」が77.3%(+3.3ポイント)と11期連続で最も多く、次いで「同業他社との競争激化」が48.8%(-3.9ポイント)、「価格競争激化」が40.7%(+0.9ポイント)と続き、前回調査から経営課題に大きな変化は見られなかった。
 業種別にみると、「原材料・燃料価格高騰」の割合は全ての業種で最多だった。また、建設業では「法改正など規制の変更」が40.5%(+9.4ポイント)と大幅に増加した。これは、働き方改革関連法による時間外労働規制(通称:2024年問題)への対応が一つの要因として挙げられ、建設業の事業所からは「従業員に残業をさせられないため受注が減っている。また、資材運搬業者も時間外労働を規制している影響で、材料仕入の遅延が発生している」といった声も聞かれた。

経営上の課題(外的).png

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調査結果(不定期調査)

「残業時間の現状と削減に向けた取り組み」

働く人のワークライフバランスが注目されるなか、残業時間の現状と削減に向けた取り組みを調査した。

令和6年4月の平均残業時間

平均残業時間は20時間までとする回答が約9割を占める

 令和6年4月の平均残業時間について尋ねたところ「0時間」「1~20時間」と回答した事業所は合計で89.6%(356社中319社)に上った。
 業種別にみると、卸売業で「0時間」が57.1%と最も多くなっており、「売上が低迷しているため残業や休日出勤は無い」「残業をするほどの仕事がない」などの声が聞かれ、前述の「景況感」や「採算」の状況を考慮すると、消極的な要因で残業時間が抑制されたことも一因と推察される。

平均残業時間.png

平均残業(業種別).png

残業時間削減に関する取り組みの有無

残業時間削減に取り組む企業は半数超え

 残業時間削減に関する取り組みの有無を尋ねたところ「進めており成果も出ている」が49.4%、「進めているが成果が出ていない」が9.0%と、半数を超える事業所が取り組んでいることがわかった。
 業種別にみると、卸売業では「進めていない」が46.2%と、唯一「進めており成果も出ている」を上回った。これは、前述の⑫で「0時間」と回答した企業の数と比例する形で、削減に取り組む必要のない事業所が多いことが要因の一つとして挙げられる。
また、従業員数別でみると、「進めており成果も出ている」と回答した割合は11名以上で63.2%、6~10名で50.7%、5名以内で43.3%となり、企業規模に比例して取り組みの効果も大きい傾向にあった。

残業取り組み有無.png

残業取り組み(業種別).png

残業時間削減に向け実施している取り組み

業種別では製造業、従業員数別では11名以上でデジタル化による業務削減を進める割合が高い

 残業時間削減に向け実施している取り組みについて尋ねたところ、「事務・業務プロセスの見直し」が39.1%で最も多く、次に「事務作業のデジタル化・設備投資」が33.6%と続き、事務作業の効率化に向け作業の見直しや設備投資を行う企業が多いことがわかった。
 業種別にみると、製造業で「事務作業のデジタル化・設備投資」が47.2%、「生産、営業活動などのデジタル化・設備投資」が39.6%と、デジタル化により解決を目指す傾向が他業種より多かった。また、従業員数別にみると、11名以上では「事務作業のデジタル化・設備投資」が42.9%と最も高いほか、すべての項目において10名以下の事業所よりも取り組んでいる割合が高く、さまざまな残業時間削減策に取り組んでいることが窺えた。

残業具体的取り組み(業種).png

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※全体の回答数上位5項目のみを掲載している。 

参考:回答者の声

●県外メディアからの取材が増え、北陸新幹線開業の効果が如実に表れている。(そば屋)➚

●新幹線開業を機に、関東からの宿泊客がこれまでの2~3倍にまで増加した。一方で、中京・関西圏からの宿泊客は減少しているため、売上増加は限定的なものである。(旅館)➚

●官公庁の広告事業にも積極的に入札に参加しており、受注が取れている状況だ。(広告代理店)➚

●取引先の小売店が経費削減のため、商品包装にリボンの使用を控える動きが高まり、その影響で自社の売上が減少している。(リボン卸売)➘

●円安が続いているので、仕入値は上がり続けており、販売価格を上げて対応している。年内にもう1度値上げがあることから非常に厳しい状況である。価格転嫁はできる商品とできない商品があるが、ある程度はできている。円建てで貿易しており、海外の企業には有利に働くので、その面を活かしながら交渉している。(眼鏡枠卸売)➘

●円安の影響で仕入値は上昇しつづけている。販売先にも価格適正化について了承を得ているものの、その分販売数量が減少し、廃版になる商品も出てきている。(繊維卸売)➘

●中国で部品等を製造しているため、円安や運賃の上昇により自動車部品の仕入値は上がっている。しかし、大手メーカーが値上げすることによって、自社も価格を上げることができており、販売価格の適正化はしやすい環境になってきている。(自動車小売)➘

●生産現場は稼働し続けているが、原材料費の高騰や人手不足による加工賃の値上げがあり業界としても厳しい状況が続いている。(繊維卸)➘

●ハローワークの掲載情報を工夫しているが応募がほとんどなく、採用が1年間で1人のみで、昨年よりも人材確保の面では厳しさを増している。(自動車小売・整備)➘

●物流業の時間外労働の上限規制によって、企業としては人員増強による採用コストの増加で経営を圧迫している。また、従業員としては生活が懸かっており、収入が減るため誰も望んでいない政策だ。(物流・運輸業)➘

調査結果ダウンロード

 

【お問い合わせ先】
福井商工会議所 金融・会計相談課
TEL:0776-33-8284 E-mail:kinyu[at]fcci.or.jp
※メール送付の際は、[at]を@に変換してください。