お知らせ
景気見通し調査(令和6年9月期)の結果を公表しました
重要 情報掲載日:2024.09.25
福井商工会議所では、四半期に一度、管内の小規模事業者を対象にした「景気見通し調査」を行っています。このたび、令和6年9月期調査の結果がまとまりましたのでご報告いたします。
調査結果(定期調査)
調査概要
調査時期:令和6年8月26日(月)~9月6日(金)
調査方法:FAXによる送付・回収およびGoogleフォームによる回答
調査対象:福井商工会議所の会員 小規模事業所を中心に2,056件を抽出
※製造業・建設業・その他・・・従業員20人以下の事業所
※卸売業・小売業・サービス業・・・従業員5人以下の事業所
回 答 数:400件(回答率19.5%)
DI値とは…ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略で、景気動向を示す指標。「良い」「上昇した」とする企業割合から、「悪い」「下落した」とする企業割合を差し引いた値。「現在」DI値は3ヵ月前を基準とした現在の状況、「先行」DI値は今後3ヵ月後の状況を予測したもの。 |
業界の景況感
全体としては3期ぶりに改善、先行きも改善の見通し
業界全体の現在DI値は、▲38.0(+6.4ポイント)。3期ぶりに上昇となった。また、先行DI値は▲35.0(+3.0ポイント)となり、景況感の先行も改善の見通しとなっている。
業種別にみると、現在DI値は卸売業で▲52.5(+25.5ポイント)と大幅に改善し、菓子卸売の事業所からは「新幹線開業を機に福井駅や敦賀駅などで菓子土産品の購入が増加している影響で、業況は好調である」といった回答があった。また、先行DI値は製造業・小売業・サービス業で改善傾向にあり、宿泊事業者からは「北陸新幹線福井開業を契機に、様々なイベントや学会などを福井で開催する動きが高まっているほか、越前ガニ漁が解禁される秋冬に向け、今後も多くの観光客が福井を訪れるだろう」との声が聞かれ、新幹線の開業効果は継続していることがわかった。
自社の景況感
改善目立った卸売業、一方でサービス業は若干の後退
自社の景況は、現在DI値が▲30.0(-0.1ポイント)と前回調査時と比較して大きな変化は見られなかった。また、先行DI値は▲33.3(-0.2ポイント)と今期と同水準に留まる予想である。
業種別にみると、卸売業は現在DI値が▲54.1(+14.8ポイント)と改善幅が大きかった一方、前回大幅に改善したサービス業は現在DI値が▲18.4(-9.3ポイント)と後退した。自動車整備業の事業所からは「エンジンオイルの価格が上昇しているが、頻繁に交換が必要な製品であるため、値上げは顧客流出につながり、価格転嫁が難しい」という声も挙がった。
売上高(受注高)
全体ではあまり変化は見られず、小売業では新幹線開業効果継続の声も
売上高(受注高)の現在DI値は、▲28.1(-0.8ポイント)と前回調査時と比較して大きな変化は見られなかった。また、先行DI値は▲28.0(-0.1ポイント)であり、今期と同水準に留まる予想である。
業種別にみると、現在DI値は卸売業で▲44.3(+13.1ポイント)、小売業で▲32.7(+9.7ポイント)と改善した。土産品を販売する事業所からは「ホテルや旅館などに加え、駅やサービスエリアで土産品を購入する観光客が増えており、従来であれば売上の低下が懸念される8・9月も好調だった」という声が聞かれた。一方で、前回調査時に現在DI値がマイナスを脱したサービス業は▲16.7(-16.7ポイント)で、再びマイナスに転じた。飲食業の事業所からは「新型コロナウイルス感染によるキャンセルの増加や、人員不足により団体受け入れが困難なため、売上が伸び悩んでいる」との声が聞かれ、新型コロナウイルスが未だ経営に悪影響を及ぼしていることがわかった。
販売価格
上昇傾向にあるも、業種間で価格転嫁の進展に差
販売価格の現在DI値は、25.7(+1.8ポイント)とわずかながら上昇となった。また、先行DI値は28.3(+2.6ポイント)と、今後も上昇の見通しとなった。
業種別にみると、製造業のみが13.9(-9.9ポイント)と現在DI値は悪化するとともに、全業種の中で最も低い数値が出ており「全国に600社以上の取引先があるため、個別に値上げの交渉をするまでには至っていない」といった事業所もあった。一方で、前回調査で唯一下降に転じた建設業は25.8(+6.3ポイント)と上昇に転じたほか、小売業でも42.3(+7.8ポイント)と上昇の傾向がみられ、自動車用品販売店からは「一般・法人問わず、常連客など関係の深い顧客から値上げの承諾を得るようにしている」といった声が挙がり、仕入価格の上昇を価格転嫁でカバーしようとする動きがみられた。
仕入価格
原材料高騰などでわずかに悪化も、そのペースはやや落ち着く見通し
仕入価格の現在DI値は、▲70.9(-2.4ポイント)と2期連続で悪化(仕入価格が上昇)した。また、先行DI値は▲65.5(+5.4ポイント)と、今後も仕入価格の高止まりは続く見通しとなったものの、業種によっては改善の期待が表れた。
業種別にみると、現在DI値は製造業で▲73.1(-4.1ポイント)、建設業で▲76.6(-8.4ポイント)と悪化(仕入価格が上昇)が顕著となった。一方で、建設業の先行DI値は▲65.9(+10.7ポイント)と改善を期待する声も聞かれ、給排水工事などを行う事業所からは「毎月のように仕入価格が上昇している状況だが、円安傾向が多少緩和され仕入価格の上昇はペースダウンしていくだろう」という回答があった。
採算(収支)
全体としては変化は少ないが、卸売業で大幅改善
採算(収支)状況を表す現在DI値は、▲37.9(+0.4ポイント)と、ほぼ前回同様となった。また、先行DI値も▲38.7(-0.8ポイント)と今期と同水準に留まる見込みである。
業種別にみると、製造業は現在DI値が▲36.7(+6.2ポイント)と改善したが、先行DI値は▲42.3(-5.6ポイント)と悪化を見通している。また、卸売業は現在DI値が▲47.5(+10.8ポイント)と3期ぶりに改善に転じた。食品卸売業の事業所からは「価格が頻繁に上昇することを懸念する取引先は多いため、仕入れた商品をできるだけ早く販売できるような在庫戦略を立て、適切な利益を確保するよう努めている」と回答があった。
労働力
「過不足なし」が3期連続の増加も、建設業では依然として高い不足感
労働力については、「過不足なし」が66.4%(+2.0ポイント)と3期連続で増加した。「不足」は30.1%(-1.0ポイント)と減少したが、3か月後は32.5%(+2.4ポイント)と増加し、再び不足感が強まる見通しとなった。
業種別にみるとサービス業の中の飲食業は「不足」が35.0%(-9.4ポイント)で、これまでの不足感が強い状況は緩やかになったとみられる。今後の見通しは、製造業で「不足」の割合が28.6%(+8.1ポイント)と不足感が高まり、「派遣も含めて募集しているが集まらない」といった声や「毎年10月から12月の繁忙期に向けてパートや派遣の募集を行っているが、今年は十分な採用に至っていない」など、人員確保に苦慮する声が挙がった。
資金繰り
飲食業では対応状況に二極化の傾向
現在の資金繰りの状況は、「問題なし」が55.9%(+0.1ポイント)と前回との変化は見られなかった。一方で、3カ月後の見通しは「問題なし」が53.3%(-2.6ポイント)と減少し、「やや苦しい」が32.9%(+3.8ポイント)、「苦しい」が13.8%(-1.3ポイント)となった。
業種別にみると、サービス業のうち飲食業では「問題なし」が50.0%(+13.1ポイント)となった一方、「苦しい」も25.0%(+14.5ポイント)と大幅に増加し、二極化の傾向が見られた。
設備投資
設備投資を控える動きは変わらず、投資内容は「合理化・省力化」が増加
今後3か月以内の設備投資計画は、「投資計画あり」が11.5%(-0.3ポイント)、「投資計画なし」は88.5%(+0.3ポイント)となり、前回同様に設備投資を控える動きが続く結果となった。
また、「投資計画あり」と回答した事業所の投資内容では、「設備更新」が54.3%(+2.3ポイント)と最も多く、次に「生産力増強」で32.6%(-1.4ポイント)と続いた。一方で、「合理化・省力化」は28.3%(+6.3ポイント)と前回調査からの増加割合が高く、飲料卸売事業者からは「省力化設備を導入することで経費の削減に取り組み、適正な利益および賃上げ原資の確保を図っている」との声があった。
経営課題(内的要因)
「受注・販売量不足」が2期連続で最多
内的要因における経営上の課題は、「受注・販売量不足」を挙げる回答が42.3%(+0.1ポイント)と2期連続で最多となった。次いで「人材確保・育成」が41.0%(-0.9ポイント)と続き、人手不足の現状を反映する結果となった。
業種別にみると、「人材確保・育成」は建設業で55.6%、サービス業で44.4%と、建設業の事業所からは「能登地方の復興に関する業務が増加しており、従来の現場の人員が不足し始めている」として、受注増加による人員不足を課題とする声が聞かれた。
経営課題(外的要因)
「原材料・燃料価格高騰」が12期連続で最多
外的要因における経営上の課題は、「原材料・燃料価格高騰」が71.6%(-5.7ポイント)と12期連続で最も多く、次いで「同業他社との競争激化」が45.8%(-3.0ポイント)、「価格競争激化」が40.8%(+0.1ポイント)と続き、前回調査から大きな変化は見られなかった。
業種別にみると、「原材料・燃料価格高騰」の割合は全ての業種で最多だった。一方で、小売業では「価格競争激化」が、それぞれ39.2%(-9.9ポイント)と大幅に減少し、スポーツ用品販売事業者からは「ショッピングセンターなどの大型小売店に対抗してオーダーメイドの商品を販売し、取扱商品の価格帯やサービスの質の違いで差別化を図っている」との声があり、付加価値で同業他社に対抗する小規模事業者の戦略が垣間見えた。
調査結果(不定期調査)
「コストの上昇と利益に及ぼす影響」
物価高が続く中、管内小規模事業者におけるコスト上昇の状況や利益に及ぼす影響について調査した。
原材料費上昇の状況
「1割以上3割未満」が半数超で最多、9割以上の事業所で上昇との回答
原材料費について、1年前と比較してどの程度上昇しているか尋ねたところ、「1割以上3割未満」が57.8%と半数を超え最多となったほか、「3割以上5割未満」が12.2%など、この1年間で9割以上の事業所で原材料費が上昇していることがわかった。
業種別にみると、どの業種も「1割以上3割未満」が最も多かったが、建設業では「3割以上5割未満」が17.4%、「5割以上7割未満」が6.5%と他業種と比べて回答割合が高い結果となり、「資材は海外からの輸入が多く、為替の影響を大きく受けている」といった声も聞かれた。
電気代上昇の状況
電気代がどの程度上昇しているかを尋ねたところ、「1割以上3割未満」が51.1%と最も多く、次いで「1割未満」が28.0%、「3割以上5割未満」が9.8%と続いた。また、「変化なし」は8.2%と令和5年9月調査時の3.4%から増加した。これは、政府の電気・ガス料金の補助金が継続されたことによるものと考えられる。
業種別にみると、製造業は「1割以上3割未満」が45.5%で最多だったが、「3割以上5割未満」とする回答(13.0%)も多く、コストアップの影響が大きいことが推察できる。一方で、「変化なし」と回答した事業所もあり、医療器具製造業の事業所からは「電力会社の見直しを図り、電気料金の削減に取り組んだ」との回答が寄せられた。
人件費上昇の状況
人件費がどの程度上昇しているかを尋ねたところ、「1割以上3割未満」が40.1%で最多となり、次いで「1割未満」が30.4%、「変化なし」が18.8%と続いた。「1割以上3割未満」と回答した建設業の事業所からは「最低賃金の引上げ率4.84%(令和4年~5年)と直近1年間の消費者物価指数が前年同月比の3%前後で上昇していることなどを考慮し、賃金の引き上げを行った」との声があった。
業種別にみると、建設業では「3割以上5割未満」「5割以上7割未満」と回答した割合が全業種平均より高くなった。これは、前述した⑦の労働力において不足感を抱く割合が他業種よりも高く、「採用・定着を強化するためには、人件費の上昇はやむを得ない」といった声も聞かれた。
燃料費(ガソリン代など)・運送コスト上昇の状況
燃料費がどの程度上昇しているか尋ねたところ、「1割以上3割未満」が49.3%と最多で、次に「1割未満」が28.4%と続いた。同じく、運送コストの上昇は「1割以上3割未満」が42.9%と最も多く、次いで「1割未満」が29.7%、「変化なし」が8.8%と続いた。中には、「2倍以上」と回答した事業所もあり、金属リサイクル業を手掛ける事業所からは「原油価格の高騰のほか、業績が好調であるため稼働率が急増し、資材運搬車両やリサイクル処理に必要な燃料の使用量も急増している」との声が聞かれた。
業種別にみると、運送コストのサービス業を除き、前述した原材料費や電気代と同様に「1割以上3割未満」が最も多く、業種による違いはあまり見られなかったが、運送コストはサービス業で「変わらない」が22.0%と他業種と比較して回答割合が高い結果となった。
それぞれのコスト上昇幅比較
1割以上のコスト上昇があったと回答した割合が最も高かった項目は、「原材料費」の74.5%(令和5年9月比:-10.5%)で、次いで「電気代」の63.6%(-15.7%)、「燃料費」の62.3%(-22.4%)となった。燃料費の割合が大きく減少した理由としては、石油元売り業者に支給される「燃料油価格激変緩和補助金」の継続により、*燃料小売価格がピーク時より下降したことが背景にあると考えられる。
一方で、「運送コスト」は50.1%(-13.8%)、「人件費」は49.5%(-6.1%)となった。
*令和4年9月:158.4円/L、令和5年9月:183.5円/L、令和6年8月:174.6円/L
(出典:資源エネルギー庁、価格はレギュラーガソリン)
注:令和5年9月期の数値は、令和3年9月と比較したものである。
コスト上昇による利益の変化
「1割以上2割未満減少」が最多、8割近くの事業所で利益が減少
この1年間のコスト上昇に伴う利益*の変化を尋ねたところ、「1割以上2割未満減少」が33.2%と最多となった。次いで、「1割未満減少」が28.4%と続くなど、8割近くの事業所で最近のコスト上昇により利益が減少している状況が明らかとなった。
業種別にみると、利益の変化を「1割以上2割未満減少」とする回答は製造業で36.0%、建設業で36.3%と多かった。また、「変わらない」と回答した割合が最も多かったのは建設業の25.3%と全業種の中では最も割合が高かった。
*利益(営業利益)=売上-仕入-経費(販売費及び一般管理費)
参考:回答者の声
●北陸新幹線開業による福井の知名度向上が、来店客数の増加につながっている。また、来店客数増加を見込んだ人材採用や社員教育などの体制づくりに取り組んできたため、現在では繁忙期における機会損失を最小限に抑制できている。(飲食業)➚ ●通常の調査業務のほか、能登半島地震の復興に向けた受注を見込んでおり、その動きが業界全体に広がっている感触がある。(不動産調査業)➚ ●日本と中国の建設需要が減少傾向にあることから、国内の鉄鋼産業も下火になりつつある。一方で、東南アジアやトルコなどの新興国などで建設需要が増加しているが、通常の鉄製品は高価格帯で売れないため、安価なリサイクルの鉄製品の需要が高まってきている。その影響で、自社を含め業界の業況は好調である。(金属リサイクル業)➚ ●自民党の新総裁(首相)による経済政策で状況が好転することに期待したい。(服飾小売業)➚ ●資材価格については、コロナ禍で上昇した後は高止まりの状況が続いている。また、着工件数は前年と比較して2割ほど減少している。(内装工事業)➘ ●原材料のみならず工具類や消耗品も値上がりしている中、値上げを受け入れる取引先は少なく、販売数量を増やして利益を確保する方針にシフトせざるを得ない状況である。(医療器具製造業)➘ ●資材の高騰や未婚率の上昇などによって、住宅建設の需要が大きく減少しており、売上が伸び悩んでいる。(不動産仲介業)➘ ●オークションやSNS広告などでマーケティングを行っているが、好調であった時期の状況にはなかなか戻らず非常に厳しい。 (スポーツ用品小売業)➘ ●現状の仕入価格は適正価格ではない。また、値上がりが進むスピードは落ち着きを見せても、価格上昇自体は止まらないだろう。(設備工事業)➘ |
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